電子帳簿保存法とは?対応で業務効率化を実現

田中 雅人
#電子帳簿保存法#電帳法#デジタル化#業務効率化#法人税法

近年、企業のデジタル化を加速させる要因の一つとして、電子帳簿保存法(以下、電帳法)の改正が挙げられます。電帳法は、税法上の帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律であり、改正によってその要件が緩和され、より多くの企業がデジタル化に取り組みやすくなりました。本記事では、電帳法の概要から対応の具体的なステップ...

電子帳簿保存法(電帳法)対応で業務効率化を実現:中小企業・経理担当者向け解説

近年、企業のデジタル化を加速させる要因の一つとして、電子帳簿保存法(以下、電帳法)の改正が挙げられます。電帳法は、税法上の帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律であり、改正によってその要件が緩和され、より多くの企業がデジタル化に取り組みやすくなりました。本記事では、電帳法の概要から対応の具体的なステップ、業務効率化のメリット、そして対応における課題と解決策まで、幅広く解説します。中小企業の経営者や経理担当者、会計事務所・税理士事務所の職員の方々にとって、電帳法への理解を深め、自社の業務改善に役立てるための一助となれば幸いです。

電帳法の概要と改正の背景

電帳法は、1998年に制定された法律で、当初は一定の要件を満たす場合に限り、帳簿や書類の電子保存が認められていました。しかし、技術の進歩や社会のデジタル化の進展に伴い、2015年、2016年、2019年、そして2022年と、段階的に改正が行われてきました。これらの改正の主な目的は、企業のデジタル化を促進し、ペーパーレス化によるコスト削減や業務効率化を支援することです。特に2022年の改正では、電子取引における電子保存要件が大幅に緩和され、多くの企業にとって電帳法対応が現実的な選択肢となりました。

なぜ今、電帳法対応が重要なのか?

電帳法対応が今、重要視される理由はいくつかあります。

  • 法改正による義務化:2022年の改正により、電子取引を行った場合、原則として電子データでの保存が義務付けられました。違反した場合、ペナルティが課される可能性があります。
  • 業務効率化の推進:電帳法対応は、単なる法令遵守にとどまらず、業務効率化の大きなチャンスとなります。ペーパーレス化によるコスト削減、検索性向上による業務時間短縮、リモートワークへの対応など、多くのメリットが期待できます。
  • 企業の競争力強化:デジタル化は、企業の競争力を高める上で不可欠な要素です。電帳法対応を機に、業務プロセス全体を見直し、デジタル技術を活用することで、競争優位性を確立することができます。

電帳法の基本

電帳法に対応するためには、まずその基本を理解する必要があります。

電帳法の対象となる帳簿・書類

電帳法の対象となる帳簿・書類は、大きく分けて以下の3種類があります。

  1. 国税関係帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳など、会計処理の基となる帳簿。
  2. 国税関係書類:棚卸表、貸借対照表、損益計算書など、決算関係書類。
  3. 電子取引関係情報:請求書、領収書、契約書など、電子的に授受された取引情報。

保存要件(真実性・可視性の確保)

電帳法では、電子保存された帳簿・書類について、真実性の確保と可視性の確保という2つの要件が求められます。

  • 真実性の確保:電子データが改ざんされていないことを保証するための措置。具体的には、タイムスタンプの付与、改ざん防止のためのシステム利用、訂正削除履歴の確保などが挙げられます。
  • 可視性の確保:電子データを必要な時に、速やかに確認できる状態にするための措置。具体的には、検索機能の確保、ディスプレイやプリンターの備え付け、操作マニュアルの作成などが挙げられます。

電子取引における注意点

電子取引における電子保存は、電帳法において特に重要なポイントです。電子取引とは、請求書や領収書などを電子メールやインターネットを通じて授受する取引を指します。2022年の改正により、電子取引を行った場合、原則として電子データでの保存が義務付けられました。紙で受け取った請求書をスキャンして保存するだけでは、電帳法の要件を満たさない場合がありますので注意が必要です。

電帳法対応の具体的なステップ

電帳法に対応するためには、以下のステップで進めることをお勧めします。

現状の業務フローの分析

まずは、現状の業務フローを分析し、どの帳簿・書類が電帳法の対象となるのか、どのように電子取引を行っているのかなどを把握します。業務フローを図式化することで、課題や改善点を見つけやすくなります。

必要なシステム・ツールの選定

電帳法に対応するためには、専用のシステムやツールが必要となる場合があります。例えば、電子帳簿保存システム、電子請求書発行システム、文書管理システムなどがあります。自社の業務規模や予算に合わせて、最適なシステム・ツールを選定しましょう。

社内規程の整備

電帳法に対応した社内規程を整備することも重要です。電子データの保存方法、管理責任者、アクセス権限などを明確に定めることで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減することができます。

従業員への教育

電帳法対応は、従業員の協力が不可欠です。電帳法の概要、電子データの保存方法、セキュリティ対策などについて、従業員への教育を徹底しましょう。定期的な研修や勉強会を開催することで、従業員の意識を高めることができます。

電帳法対応による業務効率化のメリット

電帳法対応は、単なる法令遵守にとどまらず、業務効率化の大きなチャンスとなります。以下に、主なメリットを挙げます。

ペーパーレス化によるコスト削減

紙の帳簿や書類を電子データに置き換えることで、印刷代、保管スペース、郵送費などのコストを削減することができます。また、紙の書類を探す手間も省けるため、業務時間も短縮されます。

検索性向上による業務時間短縮

電子データは、キーワード検索や日付検索など、様々な方法で簡単に検索することができます。これにより、必要な情報を速やかに見つけ出すことができ、業務時間を大幅に短縮することができます。

リモートワークへの対応

電子データは、場所を選ばずにアクセスすることができます。電帳法対応によって、リモートワーク環境でもスムーズに業務を行うことが可能になります。

内部統制の強化

電子データは、アクセスログの記録や権限管理など、内部統制を強化するための機能が充実しています。これにより、不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減することができます。

電帳法対応における課題と解決策

電帳法対応には、いくつかの課題も存在します。以下に、主な課題と解決策を挙げます。

システム導入・運用コスト

専用のシステムを導入するには、初期費用や運用コストがかかります。しかし、長期的に見れば、ペーパーレス化によるコスト削減効果がシステム導入・運用コストを上回る可能性があります。また、クラウド型のシステムを利用することで、初期費用を抑えることができます。

セキュリティ対策

電子データを保存する際には、不正アクセスや情報漏洩のリスクに備える必要があります。ファイアウォールの設置、ウイルス対策ソフトの導入、アクセス権限の厳格な管理など、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。マジセミ株式会社が開催するウェビナー「スマホがなくても大丈夫、全員が守られる多要素認証でセキュリティ強化」では、多要素認証によるセキュリティ強化について学ぶことができます。

従業員のITリテラシー

電帳法対応には、従業員のITリテラシーが求められます。ITリテラシーが低い従業員に対しては、研修や勉強会を開催し、必要な知識やスキルを習得してもらう必要があります。また、操作マニュアルを作成し、いつでも参照できるようにすることも有効です。

マジセミ株式会社では、「電子帳簿保存法にどう対応する? 既存の運用を“今のまま”活かす方法」というテーマでウェビナーを開催しており、既存の運用を活かしながら電帳法に対応する方法について学ぶことができます。これらのウェビナーは、電帳法対応を進める上で非常に有益な情報源となります。

まとめ:電帳法対応は業務効率化のチャンス

電帳法対応は、単なる法令遵守にとどまらず、業務効率化の大きなチャンスとなります。ペーパーレス化によるコスト削減、検索性向上による業務時間短縮、リモートワークへの対応、内部統制の強化など、多くのメリットが期待できます。電帳法対応を機に、業務プロセス全体を見直し、デジタル技術を活用することで、企業の競争力を高めることができます。

今後の展望

今後、電帳法は、技術の進歩や社会のデジタル化の進展に合わせて、さらに改正が進む可能性があります。企業は、常に最新の情報を収集し、柔軟に対応していく必要があります。また、デジタル化の世界的動向を踏まえ、FRB(連邦準備制度理事会)に「レジーム・チェンジ」が必要であるという指摘(ロイター記事)もあるように、グローバルな視点も持ちながら、デジタル化戦略を推進していくことが重要です。

FAQ (よくある質問)

電帳法とは何ですか?

電子帳簿保存法は、税法上の帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律です。

電帳法に対応するメリットは何ですか?

ペーパーレス化によるコスト削減、検索性向上による業務時間短縮、リモートワークへの対応などが挙げられます。

電子取引とは何ですか?

請求書や領収書などを電子メールやインターネットを通じて授受する取引を指します。

タイムスタンプとは何ですか?

電子データの存在時刻を証明するもので、改ざんを防止する役割があります。

スキャナ保存とは何ですか?

紙の書類をスキャナで読み取り、電子データとして保存することです。一定の要件を満たす必要があります。

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